背徳の雨
第5章 儚く、脆く
私が稼いだお金を全て使いきった頃
「俺…ホスト辞めたいんだ」
白狐は神妙な面持ちでそう打ち明けた。
でも彼の店は小さく、
従業員が非常に少ない。
だからこそ、酷く荒れていて
簡単には辞めさせてはくれない。
ましてや寮に住んでいる。
彼の実家は静岡で
今すぐ大阪から帰れるとは思えない。
「一緒に、静岡へ逃げてくれないか?」
きっと白狐自身も
とてつもない事を言っていると
気が付いているはずだ。
「俺には馨が必要だから…」
彼の瞳は真っ直ぐ、私を捉えて離さない。
「馨と一生一緒に居たいんだ」
だから実家へ…
彼の言葉が嘘だと思えなかった。
でも…
「静岡へは、行けない」
優雨に会えなくなってしまうから
だから私は断った。
白狐は俯く。
一瞬沈黙が流れる。
「そうだよね…」
震えた声。
白狐は顔を上げた。
哀しそうな、顔。
今にも泣き出しそうだった。
「仕方がないね…」
無理矢理笑う、彼。
瞳に溜まった涙が今にも溢れ落ちそうで
私は彼を抱き締めた。
「ごめんなさい…」
私の肩に顔を埋め、必死に涙を堪える彼。
そんな彼を見ていると
哀しくなって無意識のうちに
私は涙を溢していた。
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