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背徳の雨

第5章 儚く、脆く




怒鳴り声。

夢なのか、現実なのか
私にはわからない。
閉じた瞼を透け
明るいオレンジ色の光が見える。

「…」

突然現実感を感じた。
それも冷たい床のせいだ。

ゆっくり目を開けばそこは見慣れた場所。

…寮だった。

私は洗濯機にもたれ掛かり
バスマットの上に座っている。
何故ここにいるのかわからなくて
とりあえず立ち上がり、
リビングの様子を窺った。
リビングへと通ずる扉に
聞き耳を立てる。

物音は、しない。

私は扉に手をかけ、開けた。

そして出ようとした瞬間

「…あれは、誰だ」

突然冷たい男の声が静寂を切り裂いた。
横を見れば

竜也がいた。

竜也は私を指差し
白狐を問い詰めている。

「彼女です。」

白狐は正直に淡々と答える。
その表情は冷静そのもの。

竜也は突然白狐の髪を掴み、
玄関へ引き摺った。

「なぁ、ここは誰の家だ?」

竜也は怒りを露にする。
だが白狐は冷静だ。

「社長の家です」

白狐がそう答えると
竜也は白狐の髪を後ろに引っ張り
顔を無理矢理上へ上げさせた。

「不法侵入だ。
この女を警察に突き出す。」

竜也はそう言うと白狐の髪を離し、
私の手首を力一杯握った。

「痛い!痛い!痛い!」

折れてしまう位強く握られ
私は身動きが取れない。
白狐はその手を無理矢理ほどき

「やめてください!」

彼女には手を出さないで!

私を背中に隠し、
彼は私を必死にかばう。

「お前の手足の骨バキバキに折られるか
この女を警察に突き出すか
どっちがいい?」

竜也は狂気に満ち溢れた表情をしていた。
白狐は骨を折られる方を選び
竜也は不気味に笑った。

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