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花火の秘密

第1章 花火の秘密

アスファルトからムンムンとした湿気が込み上げてむせそうになる。

こんなに暑いんじゃどんなに急いでいても足取りは重くなる。

日が沈み、月が出ても涼しくなることはない。

今日は8月31日の日曜日。

この日を待ちに待っていた。それは僕だけやない。メンバーも、その他たくさんの人が待っていた夜。

「お待たせ!!」

「早く早く!!」

「人混んできたやろ~。」

「ごめんごめん。」

ちょうちんの明かりが六人の笑顔を照らし出す。

今日は亮ちゃんの地元、大阪での祭りにみんなでいくことになった。

「屋台めっちゃあるやん。」

「コンクリートより石畳の方がかなり涼しいな。」

「せやな。」

この祭りはこの横丁が電車の敷石を譲り受けて石畳を復活させたことを記念して開催されたお祭り。

その為屋台が並ぶ細い横丁にはぎっしり石畳が敷かれている。

「なあなあ、ヤスは浴衣着てこやんかったん?」

懐かしさに胸を踊らせながら一番後ろを歩いていると、ペタペタと草履を鳴らしながら亮ちゃんが後ろへさがってきた。

「そんなんもってへんよ。」

「そうなん?ヤスなら絶対似合うのに…。」

「そうかな…?」

やけにニコニコした様子を見て、あることに気づいた。

「亮ちゃん、きれいな浴衣着てるやん。」

「あ、気づいた?」

子供のようにクルッと回って見せて、なにかを期待するように目を見てきた。

「…な、なに?」

「…どう?」

「うん。似合ってる。」

「…それだけ?」

言葉を探して目を見てると笑顔の口が逆さまにひっくり返った。

「浮かばんならいい。」

「えっ!?ちょ…。」

頭に浮かんだのはセクシー。それはなんか言ったらあかん気がしたから言えなかった。

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