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caramel

第3章 逢


―――保険医生活二日目の朝。

「……ちっ」

あからさまに苛々している保険医、
それに気づかない生徒達。


今日も大勢に囲まれている幸也を助けたのは、昨日のアイツだった。


「…ちょ!!風紀!!!風紀委員長!!!!」
「やばっ…こっち来た!」
「まじ有り得ないアイツ…」
「先生っ!また今度ね?」

口々に勝手な事を述べた後、女生徒の群れは廊下へ消えていった。


短い黒髪、少しつった瞳の風紀委員長が此方にやってきた。

「お早う御座います」

そう言ってにこやかに笑う。

‥唐澤と岡崎って
黒髪とつり目だから
ちょっと似てるよな
って、どうでもいいか

「唐澤、お前いつもそうやって生徒から避けられて嫌じゃないのか?」


「僕には、岡崎ゆずがいますから」

また微笑んでいる。

‥ベタ惚れにも程がある
苛々の数値上げんな


「しっかし、昨日の唐澤くんは…盛ってたなぁ?」


わざと大きめの声で言ってやる。

「な、な…何言ってるんですか!?」

顔を赤らめて、口許に人差し指を立て“静かに!!”という意志を示す唐澤。


「あー、何か今ので苛々収まった」

動揺している唐澤をみるのは面白い。


不意に唐澤の顔が真剣になった。

「先生。やっぱり昨日のあの後何か…?」

「おい、そこは思い出させんな…」


‥自分でも驚く程
低い声が出た



「す、すいません…」
失礼しました、と言って唐澤は自分の教室へと、階段を上がっていった。

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