
caramel
第3章 逢
春といえど朝は肌寒いこの季節。
生徒に囲まれ身動きがとれない状態だった玄関から、保健室へは数メートルの道のりだ。
コーヒーを淹れ、冷え切った躰を温める。
我ながら、ここまで甘いコーヒーを飲み続けて何故太らないのか疑問だ。
‥って言ったら
女に恨まれるんだろーな
今日から白衣生活。
朝の職員会議で他の先生方に睨まれた。
ピアスして明るい茶髪で黒シャツじゃあ、先生と認めていただけないらしい。
白衣に白シャツが許せないだけだが。
‥しかし俺は
煙草も酒も無理なんだがな
「イメージの相違…か」
独り言を呟いてみる。
ここで、保険医は侵入者に気がつく。
ばっちり目があう。
『…私が先生に持ってるイメージは、“先生だけど、反抗期”かな?』
ふふっ、と彼女が笑う。
濃い茶色のショートボブが、
ふわふわと揺れる。
大きな黒い瞳は子猫の様な愛らしさ。
制服から覗く肌は色素が薄く透き通るような白さで、その中に咲くぷっくりとした赤い唇はより一層美しさを演出する。
「もう授業始まるよ?早く教室に戻らなきゃ」
動揺していないフリをする幸也。
‥ところで
反抗期ってどういう意味だよ
何のつもりだコイツ
『私、サボり魔だから。教室にいたら、変だからさ』
‥ここで苛々しない
あくまで大人の対応だ、俺
「…前の保険医の時から、ここに来てたのか?」
『ううん。前の先生、怖かったから。学校自体行ってなかったの』
『先生が変わったって聞いたから、どんな人か興味があって来てみたの』
‥俺は君の期待には
応えられそうもねぇな
