テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第9章 衝動と不安

さっき記帳した場所に、須永嘉之は立っていた。



Tシャツにジーンズとラフな姿だが、スラッした長身で、何気に掻き上げサラサラ落ちる髪が、何とも色っぽくさえ感じた。



「渡辺さん、こっち~!」



「は、は、初めましてっ!」



う~!テンパって声が変になる~!



「初めまして。須永です…。」



あっさりな挨拶で、私をチラッと見て、ポストカードに目を戻す。



そんな須永嘉之に対して、安岡さんが



「お前少しは、愛想良くしろよ!ごめんね。渡辺さん。」



一瞬怖さはあっけど、須永さんは、真剣にポストカードを選んでいた。



それが妙に嬉しくなった。



「ははは…いえいえ、でも須永さんの素でしょうから。」



あっ!つい、思ったことをそのまま口にしてしまった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ