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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

席に戻ると樋口さんが



「そういえば、昨日…トランスの人からなべちゃんに電話あったよ!」



「トランスから?誰だろ?」



樋口さんはメモを見ながら



「ほら、モッキーの狙ってる人だよね。この人!」



「モッキーって…。」



嫌な予感だな…。



「元木さん!えっと、須永さんから、何回かあったよ!でもこの人アーティストだよね?何か急ぎだったのかな?モッキーも様子見に来てたよ!」



「…ありがとう…。」



会社までかけてきたか…まあ、やるよな…嘉之なら。



この執着は、なんなんだろう…好きでもないなら、ここまでやらなくてもいいじゃん…。



本当に、自信なんてない…。



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