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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

「嘉之…。」



「やっぱり香織は…抱き心地いいや…。」



「なっ!ちょっと…!」
「しっ!」



カツカツと人が通る足音が聞こえて、ドキドキする。



「離して…誰か来たら…大変だよ。」



足音は、遠のいていったけど、誰がくるか分からない。



「大丈夫…。」



私の心配を余所に嘉之は、唇を重ねてきた。



「ちょっ、あっ…。」



甘く優しく舌をか絡め、唇を微かに掠めるくらいに離して顔の向きを変える。



久々に触れる感触に頭がクラクラしそうなのと、心中はハラハラで、おかしくなりそうだ。 


 
「香織…会いたかった…。」



えっ…本当?



聞く間もなく嘉之は、片手で私の頭を支え更に激しく絡めてくる。



「んっ…!!」



声が出そうなのを堪えて、嘉之の服をギュッ掴んだ。



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