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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

本当に別れられるのかな…正直自信がない。



やっぱり、元サヤに戻るべきなのかな…そんなことまで、湧き上がる。



嘉之に尽くしていれば、一応優しくもしてくれるし…。



私は嘉之の術中にまんまとハマっていきそうになっている。



考えごとをしながら、マンションに向かう途中、橋を渡りながら川の方を見た。



いつもと変わらない穏やかな流れに、自分の弱さを見せつけられる。



『強くあれ!』 



ここで、決意した。 



嘉之との別れも、小田切さんとの出会いも…どんな時もここだけは変わらない…。



私もいつかは、理想に溢れた眩い大海に、辿り着ける日がくるのだろうか…?


◎ ◎ ◎ ◎

マンションに着き鍵を開ける前に指輪を外し、付けられた痕に絆創膏を貼って中に入る。



「ただいま…。」



「あれ?香織ん帰って来たの?」



小田切さんが、少し驚きながら聞いてきた。



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