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理想と偽装の向こう側

第12章 板ばさみ

「へ…?…あぁ!!考え事してて、帰ってきちゃった!」



「ぶっはっ!香織ん、マジッ!」



小田切さんは爆笑していたが、悩み過ぎて駅の待ち合わせをすっかり失念してしまっていた。 



「ご、ごめんなさい!連絡もしてなかった!」



「はははっ!いいよ~全然!それより面白かったからさ!」



「はぁ…さよですか…。」



こんなに笑ってくれてるなら、良かったよ…。



「出れるけど、もう行く?」



「あっ…はい、ちょっと着替えて着ますね。」



「着替え?そのままでも、大丈夫そうだけど?」



私は無意識に、首元を隠し



「もうちょっとラフな格好にしようかなって…。」



「…香織ん…。その絆創膏どうしたの?」



あぁ…目ざといな…。



「虫…虫に刺されたから、絆創膏貼ったの!」



我ながら、わざとらし誤魔化し方だ。



「虫?…消毒した方がいいかもよ。香織ん、やってあげるよ。」



なに!小田切さんの優しさが、またこんな形でピンチを招く。



「だ、大丈夫!大したことないよ!」
「でも、痕になったら嫌だろう。」



だから、痕なんだもん!!



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