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理想と偽装の向こう側

第13章 対決

改めて…向き合いきれないで終わってしまったことに、気付く。
だから、心残りがあるのかも…。



「香織ん…おいで…。」
「はい?」



「こっち!こっち!」
「うっ…。」



小田切さんが手招きする。
照れ臭いけど近くに居たいと思い、寄っていく。



そんな私の頭と肩をすっぽり抱きしめて、小田切さんは優しく語る。



「嘉之に心残りのままでもいいから…焦らないで…。何かあったら、俺にぶつけていいからね。」



「小田切さん…。」



数時間前まで、嘉之とあんな状況だったのに、今小田切さんの腕の中で、至福に包まれてる…。



私って結構、強かなのかな…。



「ゆっくり、傷を舐めあっていけばいいんだから…。」
「あ…。」



瞬間…恐ろしく甘い波に飲み込まれていく感覚に陥る。



「小田切さん…。」



ギュッと服を掴む。



小田切さんの傷…私も癒していけるんだろうか?



「…小田切さんの傷…私何かで、塞いでいける?」



「ん…。香織んが、居てくれるだけで、十分だよ…。」



それは…『身代り』として? 



それでも今は、小田切さんに必要とされてるのが、嬉しかった…。



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