テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第15章 発動

「頼む!香織、お願いだから、病院に行こう!」



小田切さんが、聞いたことない様な悲痛な声で、私を説得する。



小田切さんも退く気はないようだが、こればかりは訊けない。



「い…や…。つっ!あぁっ!」



胃が捻られてるかの様だ。



「香織!」
「嫌ぁ…!」



私は抱き締めてくれてる小田切さんの服を強く握りしめ、泣き叫んだ。



「小田切さん!行きたくない!」



「そんなこと言ってる場合じゃ、ないだろ!」



「お願い…お願いだから…抱き締めてくれてれば、大丈夫…だから…。」



抱き締める腕に、力がこもる



「な…何でだよ…。」



小田切さんの声が、震えていた。 



ごめんなさい…でも、恐い…。



痛みよりも…今、小田切さんを瞬間に失う事が…何より辛いから…。



切なさで、涙が溢れてきた。



小田切さんは、私を包み込みながらも辛そうに囁く。



「香織…。」



小田切さん…。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ