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理想と偽装の向こう側

第16章 懐古

「あっ!私寝ちゃったんですね!運転してもらってるのに、一人勝手にスミマセン!」



助手席で、しょげる水越さんの頭をポンポンと撫でた。



「運転してないと、眠くなっちゃうもんだよ。昨日だって遅くまで仕事だったんだから、疲れててもしようがないよ。」



水越さんは、俺をジっと見ながら聞いている。



その瞳が愛くるしくて、ずっと頭を撫でていたくなる…本当に小動物系だな~。



「小田切さん…。」



「な~に?」 



「大好きです。」
「へっ…。」



不意打ちに、年甲斐もなく固まってしまった。



「私…変なんです…。小田切さんと会った時から、頭の中が小田切さんの事で、いっぱいで…毎日ドキドキしちゃって…。」



水越さんは、両手で顔を挟み真っ赤になりながら、ギュッと眼を瞑る。



「何か病気みたいですよね…何なんでしょうか…。」



そう言って、
「はぁ~。」と息を吐く。



いや…それを俺に聞かれても…。



正直の力って、凄いパワーだと痛感した。 



それも相手が、無意識なのが更に大打撃を与える。


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