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理想と偽装の向こう側

第5章 トラウマ

ベランダにいる小田切さんの横顔は、花屋で見掛けた時と同じ表情だったから…。



小田切さんの傷は、まだまだ解らないし、思う以上に深いのかもしれない…。



本当に『傷の舐め合い』だけだとしても、何で私なんだろう。 



偽装の同棲をしてまで、小田切さんは、何をしようとしてるのか。



夜景を見詰めてる小田切さんの瞳の先には、何があるんだろう…。



「小田切さん、お風呂いただきました。」
「香織ん、上がったんだね。」



私が声を掛けると同時に、小田切さんが振り返った。



そのタイミングに、お互い思わず笑いがこぼれる。

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