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理想と偽装の向こう側

第5章 トラウマ

「なんかこのまま小田切さんと、飲んだくれ人生ですかね…。」



「はは、香織んとだったら、それも楽しいかもね!」


こ奴っ!
また、天然でサラリと言ってのけたな!



「香織ん、何で今の仕事選んだの?」 



見事な交差点の右折ぷりを見せながら、話題を切り替えてきた。



「はぁ…う~ん、久々に問われると結構考えちゃいますね。」



「へぇ~。何で?」



「私、元々絵描きに、なりたかったんですよね。」



小田切さんは、黙ってハンドルをきっている。
その姿に話を聞いてくれてるんだろうと確信して、言葉を続ける。



「独学でしたけど、結構誉められてたんです。短大時代にインテリアとか、少しカジッてみたりもして、本格的に絵描きだけじゃ厳しい現実だったんで、日常に絵がある生活を作れないかなって、思って…たと思います…。」



「思ってた…今は?」



『今は…』
そこ、さり気なくツッコンでくるか…。


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