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シトイウカ

第1章 いち。

「流水をすくえたなら」

[とゆ]を流れ出て行く水は
強引に溝へ滑り込む
何の抵抗も許さずに

呆けた男は
遺族の涙に鈍感で
ふしくれた手で
ざらりと心をなぜつける

今が西暦何年だろうが
大した問題ではないので

今の決まりが全て
正しい決まりではないので

生まれてくることは
自分で決められないので

いつか必ず死ぬことは
避けられないので

いかに生きて
いかに死ぬか

それぐらいは
自分で決めてもいい

ただ、[とゆ]の水さへ
両手に受けきれないのだけれど

あなたの涙も
拭いてやるしかできないのだけれど


終わり

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