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シトイウカ

第2章 に。

「テディ」

築ン十年間のアパートの階段は
蛍光灯が点滅しており
ビラや枯れ葉が隅っこに
吹きだまっている

ひび割れた
コンクリートに
足音が響いている

踊り場から見える夜景は
幾度も見ているというのに
まるで馴染まない

錆びた手すりは
ペンキが僅かに残るだけ

いつもと変わらない
これまでと変わらない
これからも変わらないはずの
日曜日の夜に

テディベアが座ってた

巨大なぬいぐるみの熊は何も言わずに
僕の部屋の前で座っていた

仕方ないので
僕はタバコを勧めてみた

熊は手を振って
止めてしばらく経つ
と断った

僕は熊と話すことが思い当たらないので
熊を無視して部屋に帰った
熊の尻がドアに当たったけれど
文句は言われなかった

そして、僕は
こうしてベッドに横たわって
天井を見ているのだけれど
熊のおかげで眠れない

熊は帰るところがないのかな
熊は何か言いたかったのかな
熊は凍えていないだろうか
お腹減ってないかな

熊肉ておいしかったっけ
熊猫はパンダだったかな
そうか
死んだフリしてやるべきだったかな

こうして、僕は眠れない

そうだ、明朝、回覧板と一緒に
次に回そう

うん、おやすみ、テディ

終わり









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