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シトイウカ

第1章 いち。

「蒸し暑いから」
とても、とても蒸し暑いから
深い、深い、水の底に
沈んでいることにしました

そこでは風鈴が軒に掛かっていて
覚えていない、ばあちゃんが
冷たい麦茶をくれました

一気に飲み干せば、喉がなるね

りーん、りーん、と鈴がなる音

扇風機が回っていて
足の先から、頭のてっぺんまで
いったり、きたり

ばあちゃんの膝枕は、少し高くて
腹に掛けたタオルケットは、少しこそばい

西日差し込む二階の畳は焼けていて
やっぱり少し蒸し暑いかもしれない

夕陽は、とても真っ赤です

そんな夏の日を夢見て
僕が
息継ぎに上がってきたときには
なんだか
涙がこぼれるんです


終わり。



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