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シトイウカ

第1章 いち。

「海なぞ近くにないけれど」
波打ち際を歩いてみれば啄木の
法螺の歌声聞こえるよ
月はまだまだ高いから
ぽっかり浮かんで
夜空に一つ

あなたの肌にきらんきらん
落ちては光り瞬いて
まばたきすらも
惜しむ間に

過ぎた時など
振り返り
消えゆく記憶に涙して
いったい、それに意味はあるのか

信長の唄を誤嚥して
人間五十年と嘯けば
むせた背中をさする神様に
願い事はただ一つ
欲するものはただ一つ

今、そこに在る微笑みを
ここにしかない微笑みを
せめて

ああ
月はまだまだ高いけど
波はいつまでも打ち寄せるけど
ボタンはまだね
見つからない



おわり。

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