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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第105章 美香のPartTimeLove②

「すいません。ボク、薬もらって来るんで、もう少し中で待ってて下さい」
男の子はそう言って足早に薬局に入って行った。
アタシも中に入り、待ち合いの椅子に座った。

アタシは受け付けの前に立っている男の子の後ろ姿を見ていた。

細い体をしている。身長は175くらいだろうか。あと少しで肩までかかりそうな茶色の髪は癖の無いサラサラとしていた。淡い色のデニムに真っ白でタイトなTシャツを着ていた。
小さなお尻をしていて、やっぱり女の子のようだった。

男の子は落ち着きなくソワソワしていたかと思うと、いきなり振り返りアタシと目が合った。
男の子は焦ったように慌てて視線を外した。

しばらくして男の子は、受け付けでもらった紙コップの水で薬をのみ始めた。
アタシと同じだった。
アタシと違うのは慌て過ぎて袋に入った薬をバラバラと床に落としたことだった。
子供みたいだ。アタシはそう思った。

薬を飲み終えて、男の子がこっちにやって来た。

「ごめんなさい。今日は、目眩がひどくって来たんだけど薬飲んだから、すぐに平気になるんだ。」
男の子は頭をポリポリかきながら言った。

「じゃあアタシも同じようなものですよ。頭痛と耳鳴り。そこで水もらってすぐ飲んだからもう大丈夫やと思います」
アタシはそう言って、右手の手のひらで右耳を押さえてみた。もう耳鳴りはしていなかった。薬がきいたのか、精神的なものなかはわからなかった。今は久しぶりにちょっと楽しい気分になっていたからだった。

「ボクはイッキ21歳。よろしく。」
イッキ君はそう言ってファスナー式の長財布から1枚の名刺を出してアタシに渡した。
アタシが今日持ってきた保険証くらいの薄い名刺には、真ん中に横書きで

ITUKI

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