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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第11章 高校生活③

それはまた病院に行く日だった。
最近はトンボに会うのにアタシの中には余裕が生まれはじめていた。少しずつアタシの思うようにすすんでいるはずだったからだ。

その日は桜が満開で軽い眩暈を起こしそうになったけどそれも抑えることができた。

アタシはもう少しでこの村を出るんだ。
そうしたら桜が少ない土地に行こう。

そんな風に思ったら気分が晴れた。

その日のトンボはいつもよりも芝居じみた喋り方と態度をしていた。

なんなんだよ。気持ち悪い。アタシは子供の頃にやったトンボの顔の前で指をクルクル回して捕まえるみたいにしたくなった。

トンボが言った。
「今日はそろそろ踏み込んだお話をしようかな」そして少し間をおいて言った。
「ここをクリアーできれば私たちのゴールは近いんじゃないかな」

アタシは嫌な予感がして身構えた。

「虐待の記憶についてだ」

アタシは虐待という言葉をきいて体のずっと奥から震えがきているのを感じた。

「解離の原因となるのは虐待された経験という例が多いんだ。でも、こればかりはご両親に訊くわけにもいかない。今から君の記憶を辿って思い出していこうかと思う」

虐待・・・・

アタシが?

誰に?

そんな記憶なんてない・・・・

でもなんでこんなに脚が震えてるの?



まずい。耳鳴りがはじまった。

ダメ。ダメー!!

誰も出てきちゃダメだよぉー!!


ああああああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!

アタシは叫びそこから時間を失った。

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