
~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~
第12章 トンボの話①
今、私の目の前にいるのは私の患者である
星野 美香。高校2年の17歳だった。
「解離性同一性障害」
それが彼女の病名である。
臨床医となって15年の私にとって初めて扱う種類の患者であった。もちろん精神科のテキストで知識として知ってはいたが、まさかこんな片田舎の病院で自分が担当するとは、正直、今もまだ信じられないくらい驚いている。
彼女は、あまり表情の変化がないこともあって、整ったその顔はまるで人形のようだった。華奢な体つきで細くまっすぐで長い手足をしていた。そして特に目を引くのが、血管が透けるくらいのまさに雪のような白い肌をしていた。
催眠療法中にそのきめが細かく吸い付きそうな肌に一度触れてみたいという強い欲求にかられたことがあったが、精神科医として彼女を診察・治療していくことの喜びを失いたくなかったので抑えることができた。
彼女の診察を始めて3年になる。
最初の不安定さからすると、最近はとても落ち着いてきたように思えた。
それでもまだ彼女は時折、混乱を起こし他の人格に分裂することがあった。
私はそろそろ一歩踏み込んだ治療が必要な時期がきたと思っていた。
私の目標は彼女の中にいる人格たちの統合だった。
そのためには彼女がこのような症状になった原因を見つけなければいけなかった。
そして今、彼女は私の質問がきっかけでパニックを起こし叫び、子供の様に泣いている。
子供?
「だいじょうぶだよ。もうなかなくてもいいんだよ。なにもしんぱいはいらないよ」
私は声をかけてみた。
「オジチャンダレ?」
泣き止んで、鼻をすすりながらモジモジとして彼女が言った。
「ボクはおいしゃさんだよ。キミはだれかな?」
「アタシハミユ」
「ミユちゃんかぁ。はじめましてだね。ミユちゃんはいくつかな?」
「8サイ」
また新しい人格が現れた。
これは進歩なのか?
それとも後退なのか?
私は表情も声までもが幼女になってしまった彼女を見つめた。
星野 美香。高校2年の17歳だった。
「解離性同一性障害」
それが彼女の病名である。
臨床医となって15年の私にとって初めて扱う種類の患者であった。もちろん精神科のテキストで知識として知ってはいたが、まさかこんな片田舎の病院で自分が担当するとは、正直、今もまだ信じられないくらい驚いている。
彼女は、あまり表情の変化がないこともあって、整ったその顔はまるで人形のようだった。華奢な体つきで細くまっすぐで長い手足をしていた。そして特に目を引くのが、血管が透けるくらいのまさに雪のような白い肌をしていた。
催眠療法中にそのきめが細かく吸い付きそうな肌に一度触れてみたいという強い欲求にかられたことがあったが、精神科医として彼女を診察・治療していくことの喜びを失いたくなかったので抑えることができた。
彼女の診察を始めて3年になる。
最初の不安定さからすると、最近はとても落ち着いてきたように思えた。
それでもまだ彼女は時折、混乱を起こし他の人格に分裂することがあった。
私はそろそろ一歩踏み込んだ治療が必要な時期がきたと思っていた。
私の目標は彼女の中にいる人格たちの統合だった。
そのためには彼女がこのような症状になった原因を見つけなければいけなかった。
そして今、彼女は私の質問がきっかけでパニックを起こし叫び、子供の様に泣いている。
子供?
「だいじょうぶだよ。もうなかなくてもいいんだよ。なにもしんぱいはいらないよ」
私は声をかけてみた。
「オジチャンダレ?」
泣き止んで、鼻をすすりながらモジモジとして彼女が言った。
「ボクはおいしゃさんだよ。キミはだれかな?」
「アタシハミユ」
「ミユちゃんかぁ。はじめましてだね。ミユちゃんはいくつかな?」
「8サイ」
また新しい人格が現れた。
これは進歩なのか?
それとも後退なのか?
私は表情も声までもが幼女になってしまった彼女を見つめた。
