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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第92章 ドライバーでスカウトマンで⑨

プリウスの後部座席はやや狭く、ユミさんは窮屈そうにして座っていた。

ユミさんは疲れているようで無表情に

「はい」

と言ってポケットから数枚のお札を折ったままサブローさんに渡した。

「お疲れさまです」
そう言って、サブローさんがお金を受け取り、すぐに金額を確かめて携帯をかけた。

「サブローです。ユミさんキャッチしました。次は?はい。三宮のアルファですね。了解しました。」

そう言って。ボクに指でこの駐車場を出るように合図した。

ボクは頷いて三宮方面に向かおうとした。

「あー。イッキ君。この時間はこっちの道は混むから反対側から行こうか。そういうのも少しずつ覚えていくんやで。ルートはたくさんあるからな」

「はい。わかりました」

ボクはそう答えて方向を変えた。

左右確認をする時にルームミラーで後ろのユミさんを見た。

ユミさんはチラっとこちらに視線を向けて目が合ったが、それは一瞬で何事も無かったかのように視線は外された。

「で、カミカミ君はいくつなん?」
ユミさんが携帯をいじりながら言った。
「21です。」
ボクが答えると
「21!わっかー!またボビーさんも嫌みなことするな」
ユミさんはそう言い。それから二度と話さなかった。
サブローさんは隣でニヤニヤ笑ってた。

こうして、ボクのドライバー修行が始まった。

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