
そんな想い
第2章 片山と松岡
就職氷河期なんて言葉、当たり前すぎて誰も言わなくなった時代。
ラッキーなことに、大学を出て今の会社に俺は入った。
そして、ラッキーついでに、この会社で松岡さんに出会った。
松岡さんは、俺の2年先輩。
お兄ちゃん気質というかなんというか。
非常に面倒見の良い人で、特に指名されたわけでもないのに、俺の教育係みたいな感じだった。
始終一緒にいるもんだから、「お前らアヤシイ」なんていう人まで出てくる始末。
そんな時、松岡さんは笑って、
「片山は俺の嫁ですから」
なんて冗談で返してたっけ。
そうすると、その場は笑っておしまいになる。
「アヤシイ」なんて噂も、すぐに消えてしまった。
会社員としての環境なら、それは結構なことだった。
けど、俺の気持ちは少し沈んだ。
