お兄ちゃんはいちご味
第13章 麻くんとあたし
どのくらいの時間が経ったのかわからない
あたしとお兄ちゃんの間には重苦しい沈黙が流れていた
外を確認しようと窓を覗いたその時―――
『…果乃ちゃん!捺くん!ここにいるの…!?』
外から麻くんの声が聞こえた。
「あ、麻くん…!?」
「麻人…?」
慌ててドアを開けて外に飛び出すと、懐中電灯を持った麻くんが立っていた。
雨はすっかり小降りになって、空は微かに明るくなっている
「麻くん…!!」
あたしは思わず麻くんに力いっぱい抱き着いた。
「…よかった…二人とも無事…?」
「うん…麻くんは…?」
「俺は全然なんともないよ。二人とはぐれたから、急いで家に戻っておじさんたちに知らせたんだ。今頃おじさんたちも果乃ちゃんたちを探してる」
「そっか…」
「…ほんとにごめん…俺のせいで…」
麻くんは珍しく落ち込んだ表情をしていた。
「気にしないで、麻くん」
「いーや、気にしろ。麻人」
「はっ!?ちょっとお兄ちゃん!?」
「クスッ…よかった、捺くんもなんともないみたいだね」
「笑ってんじゃねーよ。」
「ごめんごめん。とりあえずここを降りよう。俺道分かるからついて来て。おじさんたちにも連絡しなきゃね」
お兄ちゃんと麻くんのやり取りを見てホッとした。
よかった…
お兄ちゃん、いつも通りだ…
それからあたしたちは、無事に家に戻った。
脚の怪我で歩けないあたしは、迎えに来たパパにおんぶされて山を降りた。
麻くんはもちろん、お兄ちゃんもパパやおじいちゃんにこっぴどく叱られました。