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美味しいケーキの果物たち

第3章 オレの名前はヨシキだ!

(やっぱり…)
 教えられた道順に来たら、さっきまでいた喫茶店に着いた。

 ウエルカムボードの店名を確認する。

 アルファベットでNOUR…

(ノウラ…英語じゃないのか?)
 スペルを呼んでも、大家が言ったヌゥリテュ…と読めない佳輝。

 出窓から見える店内は、昼間より少し薄暗く、人影があまり見えない。

(ここで…あってると思う…でもなぁ…)

 頭の中に一瞬カウンターの男性がよぎる。

 ゾクっと体がざわめく。

(治まっていたのに…)
 佳輝が二の腕を何度も擦る。


「あ…あの~」
 後ろから男性が声を掛けられる。

 佳輝は慌てて振向くと、元気良くこの喫茶店に飛び込んできた青年だった。

「あ!やっぱり!さっきの子だ!どうしたの?忘れ物?」
 元気な青年は、パッと明るい笑顔になって話し始める。

「あ、あの銀杏荘の大屋さんからここで待つように言われて…」
 佳輝は少し引き気味で話す。


「ぎんなん?あぁ、伊蝶さん所だね!」
 元気な青年は人差し指を立てて、笑顔になる。

(イチョウ?あの女性の名前なのかな?)

「うーん!伊蝶さんまだ来てないね…」
 元気な青年は出窓のガラス越しに中を見ている。

「そ、そうですか…」
 佳輝は青年を目が合わないように下を向いている。

「日が落ちると、結構寒くなるから、中でまってたら?」
 元気な声の男性が佳輝の手を取ると、中に入ろうとする。

「あ、あの…」
 店に入るのを少し躊躇する佳輝。

「?どうしたの?」
 元気な声の男性が不思議そうにこちらを見る。

「い、いや…なんでもない…」
 下の向いたまま話す佳輝。

「ようこそ!ヌゥリ・テュールへ」
 佳輝をグイグイ引っ張って店に入る青年。


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