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美味しいケーキの果物たち

第2章 珈琲の香りに誘われて

  ピピッ
 しばらくして、携帯がなる。

「はい…」

  「もしもし…樽床さん?」

「はい。そうです」

  「私、銀杏荘の大家です」
 大家と名乗る女性からの電話だった。

「あーはい…」

  「入居当日にこんな事になって、本当にごめんなさい。今、私は警察に来ているので、詳しい事は後になるけど、今日どこか泊まるあてはある?ホテルとか?」

「………」
(当面の生活費のお金だから、大事にしないと…)
 佳輝は返事に困る。

  「学生にはホテルは無理よね。ごめんなさい…」
 佳輝の返事がないので、大家は困った声を出す。

「…あの。他に空いてる部屋とかありませんか?」

  「私の持ってる物件は1戸だけなの……ごめんなさい…」

(マジかよ…ホテルに泊まるしかないか…)
 言葉が声にならなくなりだした佳輝。

  「困ったわ…あ!そうだ!銀杏荘の近くに友人の店が在るの。そこで待っててくれる?もしかしたら、空いてる部屋があるかも!」


「え?本当ですか?助かります!」
 佳輝の顔に光がさす。

  「お店の名前は“ヌゥリ・テュール”って言うの」

「ぬりつーる?」

  「ヌゥリ・テュールよ。レトロなバールなの。私の名前で好きなもの頼んで?連絡しとくから…」

「ありがとうございます…」


 佳輝は大家に教わった店の名前と住所を頼りに、町を歩き出した。


 すっかり、日も落ちて、町の雰囲気は夜の顔になっていた。

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