『幼なじみ』
第29章 談合
左側のVIPルームの中へ・・・
漸く・・・
足を踏み入れた拓弥は・・・
余りの・・・
妖しい雰囲気に・・・
たじろぎ・・・
思わず声を挙げる・・・。
「ス・・・スゲーな・・・」
耳に心地良い・・・
スローテンポの
ハウスの音が充満する中・・・
暗闇に・・・
赤いライトが
ポツポツと点灯し・・・
正に・・・
カップルシートのような
ソファーが・・・
イチャついて下さいと
言わんばかりに・・・
等間隔で
無数に並べられている・・・
この空間は・・・
初見の拓弥にとって・・・
凄まじい程に
刺激的で・・・
淫靡な光景だった・・・。
が・・・しかし・・・
そんな・・・
色気のある
この部屋の空気を・・・
ぶち壊すかのように・・・
先に中へと
入っていた
春斗の兄貴が・・・
酒焼けでも
してるかのような
シワがれた声で・・・
おもむろに
此方を向き・・・
話し掛けて来る・・・。
「お前ら・・・
そんな所に
突っ立ってねーで・・・
一番奥に・・・
個室があっから・・・
さっさと来いよ・・・」
先程の・・・
鬼の形相とは
打って変わって・・・
冷静な面持ちで・・・
二人を急かした兄貴は・・・
ゆっくりと・・・
部屋の壁際を
歩きながら・・・
薄暗い闇に消えていく・・・。
すると・・・
ふと・・・何か・・・
思い詰めた様子の
春斗が・・・
兄貴の背中を
マジマジと
見つめながら・・・
早く・・・兄貴の後を
付いて行こうと・・・
慌てふためく拓弥の隣に・・・
いきなり・・・
ピタリと張り付くと・・・
耳元にスッと
顔を近づけ・・・
静かに囁き始めた・・・。