『幼なじみ』
第32章 暗転
先に歩いていた
二人と・・・
ほぼ同時に・・・
人気の少ない壁際に・・・
到着したあたしは・・・
何とか・・・
この重たく固まった
空気を打ち消そうと・・・
背後から元気よく・・・
声を掛けてみる・・・。
「ねぇ~
相変わらず・・・
このクラブ・・・
盛り上がるよね~?
じゃぁ・・・
ビールが冷たいうちに・・・
乾杯しよ~!」
すると・・・
喜多見に絡めている腕を・・・
パッと離し・・・
勢いよく振り返った
美波が・・・
喜多見の手から強引に・・・
コロナビールを
一本もぎ取ると・・・
冷ややかな笑みを
此方に向けながら・・・
人を蔑むように喋り出す・・・。
「な~んだ・・・
もう元気になったんだ・・・
悠希は・・・
何に乾杯する訳~?
あ~そっか!
幼なじみ君と・・・
上手くいったんだもんね~?
良かったじゃん!
じゃぁ・・・あたしは・・・
喜多見さんとの
再会を祝して・・・
乾杯しよっかな~?
悠希もさ~
自分だけ・・・
抜け駆けしてないで・・・
あたしと
喜多見さんの再会・・・
祝いなよ・・・
じゃ・・・
そーゆー事で・・・
喜多見さんッ!
乾杯~ッ!」
未だ喧嘩腰の・・・
美波の台詞に・・・
ハッとしたあたしは・・・
思わず・・・
心の中で納得する・・・。
『やっぱり・・・美波・・・
自分がVIPから
居なくなった後・・・
拓弥とあたしが・・・
イチャついてたって・・・
勘違いしてるんだ・・・
どうにか・・・
誤解を解かなきゃ・・・』
伏し目がちに
なりながら・・・
ふと・・・
考え込んでしまった
あたしに対し・・・
美波の隣で・・・
温かな目で見守っていた
喜多見が・・・
静かに口を開いた・・・。