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『幼なじみ』

第44章  忘却



老朽化の進んだ
灰色の階段を・・・


猛ダッシュで
駆け上がり・・・


薄暗い壁に・・・
⑥の文字を発見した
あたしは・・・


階段の踊り場から・・・
病棟に続いている
廊下へと・・・


流れるように・・・
足を踏み入れ・・・


拓弥の居る病室へ・・・
颯爽と向かって行く・・・。


そして・・・


見覚えのある・・・
603号室と書かれた札を
すぐさま発見し・・・


立ち止まると同時に・・・


上がった息と・・・
乱れた身なりを整え・・・


拓弥との対面を前に
高ぶる緊張感を・・・
全身にまといながらも・・・


静かにドアノブに
手を掛け・・・
そっと扉を開ける・・・。


すると・・・


窓ガラスから
突き刺して来る
太陽の光で・・・


一瞬目の前が・・・
真っ白になるが・・・


徐々に・・・
明順応で・・・
両目が明るさに慣れた
矢先・・・


ベッドの上で横たわる・・・


相も変わらず
別人のような・・・


頭に包帯を・・・
グルグル巻きにされた
拓弥の姿が・・・
途端に目に映り・・・


痛切な思いが・・・
一気に込み上げて来た
あたしは・・・


一心不乱に・・・
拓弥の枕元に
駆け寄って行く・・・。


「た・・・拓弥ッ・・・!」


あたしの声が・・・
意識の中に届いたのか・・・


拓弥が一瞬・・・
眉間にシワを寄せる・・・。


「ねぇ・・・拓弥・・・?


あ・・・あたし・・・悠希・・・
分かる・・・?



まだ・・・すごく痛むの・・・?




あ・・・あたしね・・・?


拓弥が・・・
死んじゃったら・・・
どうしようって・・・


不安で・・・不安で・・・




でも・・・
生きててくれて・・・


ほんとに・・・良かった・・・」


目が醒めたと・・・
看護師から
聞いたとはいえ・・・


未だ瞳を閉じたままの
拓弥に・・・
不安になりつつも・・・


精一杯の・・・
思いの丈を・・・
ぶつけたあたしが・・・


紫色に腫れ上がった
拓弥の左手を・・・


軽く握った・・・
その瞬間・・・


その手が・・・
ピクリと反応し・・・


拓弥の両瞼が・・・
ゆっくりと開いた・・・。



















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