『幼なじみ』
第9章 春斗と梨香
そして・・・
あれから・・・
何往復も・・・
センター街を
闊歩しながら・・・
何十人もの女に
声を掛けては
みたものの・・・
殆ど自分の声に
耳を傾けては貰えず・・・
ことごとく
玉砕した拓弥が・・・
途方に暮れたまま
天空を仰ぎ・・・
まんまと・・・
情けない声を挙げる・・・。
「あーあ・・・
やっぱ・・・俺・・・
センスねぇのかも・・・」
肩を落とし・・・
ふと・・・
ビルの電光掲示板の・・・
デジタル時計を
確認してみると・・・
すでに・・・
夜の九時を
回ったようだ・・・。
「あー・・・また・・・
藤野さんに・・・
目玉食らうっしょ・・・
つか・・・
今日色々あったし・・・
何か・・・疲れたな・・・
もう・・・遅いし・・・
車取って・・・
サッサと・・・
引き揚げるか・・・」
鉛のように
重たくなった足を・・・
ズルズルと
引きずりながら・・・
どんよりとした
重苦しい気持ちに・・・
あたかも・・・
見舞われてしまった
拓弥は・・・
暗い夜空に・・・
ネオンがキラキラと
妖しく光る・・・
眠らない街
センター街を・・・
もの哀しげに・・・
トボトボと後にした・・・。