優しくしないで
第14章 未来を描く力
“無”…
そうか…今の私は…その表現がピッタリだ…
『…仁がね…その、無…の奴だった…』
え………?
仁さんが…?
オシャレで、キラキラしてて…
いつも優しい…仁さんが…
“無”の人間?だった?
『…昔ね、仁もいろいろあったみたいでね…
無気力…通り越して…
“無”の世界をただよってたよ…』
コーヒーの香りは…タバコに混ざって…苦く、煙い香りになっていたが…
ググっと…
深い香りが…鼻の中に残った…
『え……?』
『…意外?』
入間さんは微笑み…
カップを置いた
『はい……』
『…今の仁は…“無”ではないけど…
根っこには、まだ“無”があるのは、見てて解っちゃうかな…?
でも、美容師になるって決めてからは…色が少しだけど着いた気がする』