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優しくしないで

第15章 着色の一歩



『おっ…居残り練習とは!
葛を入れたかいがあったね〜』



スタッフルームから桃さんが顔を出した。


「ですね、葛が入りました」



俺と桃さんは笑いながら、マネキンのカットを見た…


『そ〜言えば…
今日ね、カットモデルした…留美ちゃんだっけ?に会ったよ』



俺は、ハサミの動きが止まった…




「あ…留美ちゃん…どうでしたか………?」



学校…
ちゃんと行ったんだよな…



『下校途中の、彼女をナンパしてお茶して来たよ〜。』




「は?お茶ですか…?」



『昔の…仁みたいだった…
無気力、無表情…を通り越した…“無”の時の…」




「…留美ちゃん…」



桃さんは、マネキンの髪を摘むと毛先を見た…



『…あの時みたいに…声をかけちゃった…

何かの…着色になればなぁ〜って思ったんだけど…

留美ちゃんの制服をタバコ臭くしただけだった〜』



桃さんはケラケラ笑って、カットの注意を何個かして…


『ちゃんと片付けて帰ってね〜』



と…店をでていった…




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