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優しくしないで

第20章 走り出す

留美Sideへ―――――――



フワフワ……



優しい香りに包まれて…




私は…夢を見ている…





仁さんと…太一が…



背中を合わせ…座っている…





雰囲気が似ている二人…




太一は…もう…いないけど…



まだまだ…鮮明に思い出せる…




しかし…仁さんの香りに包まれて…



仁さんの優しさに触れて…


仁さんの、笑顔も…


すぐに思い出せる…




だから…こんな夢を見ているのかもしれない…




「留美…」
「留美ちゃん…」



二人に呼ばれる…



トックン…と…心臓が…熱くなる…



背中合わせの二人…



似ている…二人……




気になる…二人…





どちらも…私には必要な気がした…





でも……
胸の中がギュッと…苦しい…





どうして…二人は…



私を呼ぶの…?




「留美…」
「留美ちゃん…」




――――――――――…



―――――――…



――――…


――…







『ん…あ……寝ちゃた?』



目を覚ますと…仁さんが微笑んでいた…



「起きな、こんな所で寝たら、風邪引くぞ」



『あ…はぃ』



私は…枕にしていたタオルをギュッと…抱きしめた…


あああ…落ち着く…


この香り…



私は…微笑む…




落ち着く…仁さんの香りだから…





『…何時ですか?…すみません…遅くまで…』



「大丈夫だよ?それより…留美ちゃん、疲れてた?」




『はぁ…また…不採用だったので…』



「そっか……新しい、求人は?」



私は…かばんから

ファイルを取り出したが…


まだ、寝ぼけていたのか…


ファイルの中身を床に落としてしまった!!!



「…寝ぼけてる?」



『……少し…』




慌てて二人で拾う……



散らばった中に…新しい求人プリントを見つけ…




仁さんと私の同時に手が伸び、掴んだ…




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