優しくしないで
第3章 時は止まる
『そうなんですか…』
ニコニコ笑う男性は、留美の長い髪をみて…そっと触れた
「ねぇ、高校生ちゃん?
いつから切ってないの?髪」
ドキッ…とした…
あれから…切っていない…
『あ…一年以上は…』
男性は毛先を見ながら
「伸ばすにしても、毛先は揃えて整えたほうがいいよ?綺麗な黒髪なんだから…勿体ない」
と…毛先に唇を寄せた…
太一の唇を寄せる仕種に…
重なって見えた…
それと同時に…
静ちゃんの顔もパッと
脳裏に割り込んできた
私は…下唇を…噛んだ
「あっ…ごめん!
よかったら…カットモデルしてみない?
俺の練習に付き合わせる感じだけど…」
『はぃ…』
今の状況を打破したくて…つい、彼の誘いに乗ってしまった…
「よっし!じゃぁ、早速!」
彼は私の手を掴み
歩きだした
手を繋いで
歩くなんて…
何年ぶりかな…
彼の手は…少し…
強引で…優しかった…
ズキン