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優しくしないで

第3章 時は止まる



「おまたせ。
高校生ちゃん…緊張してる?」



俯いていた私は、顔を上げて鏡にうつる彼の顔をみた



『大丈夫…です』



「え〜っと、こちら店長の入間 桃(イルマ・モモ)さん」


鏡越しに店長さんはニコッと笑った


『仁のカットモデルを引き受けてくれてありがとう。
今日の出来で、カットを任せるか決めるから。
仁も頑張ってね』


「はい。」




彼の顔が引き締まっていく…



「それでは、今日カットを担当します。
佐藤 仁(サトウ・ジン)です。
よろしくお願いします!」


『はい!よろしくお願いします』



仁さんは、深呼吸をして…



私の髪に触れた











その顔は…



さっきまで、ケラケラ笑っていた顔ではなく…



仕事をする…


大人の顔になっていた








鏡の中の仁さんは…

キリリとして


私の髪を真剣に見つめる…











私は…真剣に働く人間を…


見たのは
初めてかも知れない







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