優しくしないで
第3章 時は止まる
仁さんの手が
優しく私の髪に触れる…
大人の男性…
仕事の顔…
毛先を揃えるだけのために…
申し訳ないと感じる
「高校生ちゃん?
そんな顔するなよ…カットを頼んだのは俺だから。申し訳ないとか…思わなくていいんだよ」
俯き気味の顔を上げ、鏡をみると…
眉間にシワを寄せ…申し訳なさそうな私が映った
「この毛先があって、今のこの黒髪がある…
そして、今の黒髪を綺麗に伸ばすために、いろいろ背負ってくれた毛先にバイバイしないとね」
『背負ってくれた…毛先?』
チョキン――――――――…
床にバサバサの毛先が落ちた…
チョキン―――…
チョキン…
毛先がパラパラと…
床を黒くして行く
私の心や過去も…
切り落とせたら…
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