優しくしないで
第24章 後ろ髪……
『…ごめんね…いきなり来て。
ビックリしたでしょ?』
奏の声は…
あの頃と…全くかわらず…
透き通るような…綺麗な声だった……
「……奏……耳は……」
奏は…俺の唇を見つめる…
『あ…耳?
片耳だけ…補聴器でなんとか…
でも、さっき落としちゃって…
彼女が…一緒に探してくれたの…』
奏は、スタッフルームに消えた留美ちゃんを探す…
「じゃぁ今は?」
『…唇を読んでる…
彼女…手話できたから…凄く助かった。』
《……俺が…教えてるんだ》
俺は、奏の前で……
指を動かした……。
奏に対して…使うことがないと思っていた……手話…
こんな形で…使うなんて…
『……仁……
会いたかった……会いたかった……』
奏は……俺の動く手を握り…
瞳を潤ませ……笑っている…