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優しくしないで

第26章 喝采…

奏さんは拍手の中…深々とお辞儀をし…


客席を見渡す…




―――――――ドキッ…







奏さんがこちらを見て…





微笑んだ……





ゆっくりピアノの前に座ると…



鍵盤に長くて綺麗な指を乗せる…




左の手首には…深く目立つ切り傷……




仁さんを…見る…



多分同じ場所を見て……




罪悪感を…感じているの?








奏さんに目を向ける…






一呼吸……





指が…鍵盤を…弾き…





音を…生み出した…










クラシックのピアノ曲なんて全くわからない私が…








奏さんの…生み出した音色に…




引き込まれていく…







凄い……






凄いとしか…私には…





言い表せないのが…悔しい…







グッ――――――…




『!………仁さん』




私の手を…ギュッと掴み…


仁さんは……









泣いていた――――――…





その涙は…綺麗で…






綺麗で…






仁さんが…





…幸せそうに見えた…










奏さん…





仁さんに…


貴方の強さ…


…伝わりましたよ………






弱くて…逃げて…後悔して…



それでも…諦めなかった…




奏さんの…姿…



奏さんの…ピアノ…





凄く……かっこいい…



凄く……綺麗…




凄く……生きている…








太一…




聞こえてるかな…?

このピアノ…





私も…この音色のように…


最後は強く…



生きて行けるかな…?






私は…仁さんの手を握り反す…






その手と手は……



自然と絡み合い…




手を繋ぎ………



演奏を聞く…………




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