テキストサイズ

夢で逢えたなら~後宮秘談~

第3章 結ばれる

 例えば、十歳になったばかりの夏、殿舎の軒下にできた蜂の巣退治を言いつけられたときも、今回と似ていた。誰もが厭がり、しかも生命の危険すら伴う仕事を崔尚宮は淡々と百花に命じたものだった。
 百花は庭を掃く柄の長い箒を持って蜂の巣に怖々近寄り、つついて落とそうとしたのだが、見かねたものか、若い内官数人が寄ってきて代わりに駆除してくれた。
―そんなやり方をしていたのでは、そなたが蜂に身体中刺されて死んでしまうぞ。
―どうせ、俺たち内侍や女官は使い捨てさ。死んじまえば、代わりなんか掃いて捨てるほどもいる。
―止せよ、年端もゆかない幼い女官見習いにそんなことを聞かせなくても良い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ