テキストサイズ

夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 自らが立案した宴では毎回、必ず一篇の漢詩を詠み、列席者を感嘆させ、それがまた、大王大妃の開く宴の何よりの呼び物となっていた。もっとも華やかなことが好きな大王大妃ではあっても、世に並びなき〝聖君〟と呼ばれた道祖の妻であり、その良人を支えた賢夫人である。
 ましてや孫の導宗が民の切迫した暮らしを憂え、万事につけ質素を心がけているこの状況で、自分だけが享楽に耽るなど愚かな真似をするはずもない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ