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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 風が吹いただけで、倒れてしまいそうなほど気弱で内気な少女だったのだ。自分のように負けず嫌いで、何とかして国王の寵愛を受け、この後宮でのし上がってゆきたいと野望を持つような娘ではない。
 その従妹のか弱さ、脆さを誰より知るだけに、金淑儀は心配でならず、三日にあげず見舞いに行っていたのだ。
 昨日もいつものように見舞いに行ったところ、従妹は少し恥じらいながらも、どうやら懐妊したらしいと告げたのだった。
 正直、告白された時、嫉妬心を感じなかったといえば、嘘になる。従妹も美しいが、それは喩えるなら野辺にひそやかに咲く秋桜(コスモス)のようであり、派手やかな美しさという点でいえば、間違いなく我が身の方が勝っているという自信はあった。

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