甘い毒は変態を刺す
第3章 絶対領域
もちろん、ドアを開けた先には待ち望んでいた彼で。
つい今日は両親遅くまで帰って来ないから、なんてよくあるセリフを吐いてしまった。
「で、お願い事の件だけど」
俺の部屋に入るなりそう切り出したのは意外にも矢吹くんだった。
「あ…え、と…」
用意までしたくせにいざとなると照れて目線で伝えようとする。
矢吹くんも俺の目線を追い、ベットに置かれたコスプレ用のメイド服に行き当たった。
「どうしてそんなの持ってるかは聞かない、から、あっち向いて」
さすがにドン引きしたのか声色が少々冷めたように感じた。
彼女に来てもらう予定だった。という弁明は言えず、大人しく後ろを向いて矢吹くんの着替えを待った。
布の擦れる音でさえ、俺の鼓動を早める原因となった。