甘い毒は変態を刺す
第2章 浅い、深い関係
俺の声に振り返る人物はやはり矢吹くんだった。
相変わらず変わらない笑顔で微笑んで、ストーカー紛いな行為をして良かったとさえ思ってしまう。
目の前に、また矢吹くんが、いる。
何かが切れてしまいそうだった。
「どうしたの、鈴原く……んっ」
心配そうな矢吹くんの口を塞ぎ、柔らかい感触だけを楽しむ。
それだけでは足らず舌を矢吹くんの唇に当てがい、口内へ入ろうと目論んだところで矢吹くんは止めた。
「更衣室開けるから、ここでは待って」
リミッターが外れそうな俺にとって鍵を再び開けるまでの時間ですら早く、早くと念じてしまう。
ドアが開かれ、お互いが更衣室内に入ったのを確認するとまた先ほどの続きを始める。
小さい熱い舌が俺の舌と合わさって、どっちの唾液かも分からないものが矢吹くんの口角から一本の筋となって垂れる。
「ん、……んっ……ふ、あ」
息を吸う度に聞いたこともない甘い声が耳と脳を刺激する。
ふと、唇を離すと口の端から唾液を垂らす矢吹くんはなんとも淫らで綺麗で…
親指で慎重に唾液を拭き取ると矢吹くんは笑ってお礼を言う。
俺はこんな無垢な美少年に何をしてるんだと錯覚させられる。
この子は自分から誘ったんだ。
そう、元は全部彼だ。
「鈴原くん…どうして僕を探してたの?」
その言葉にサーっと血の気が引くのが分かる。
「探してたよね?あの日からずっと」
「僕、気づいてた」
今度こそストーカーという立派な犯罪で停学、いやむしろ退学処分になるかもしれん。
と、またもそんなことを考える。