雨の人
第3章 告白
「痛いよ!イヤだよ、
ゆうま!やめて!」
私は、必死で抵抗した。
大きな声を出したかもしれない。
無我夢中で、
どうなってるのかも
分からないまま、とにかく、
ゆうまから逃げ出そうとしていた。
その時
少しだけ空いていた
車のドアが
大きく開いた
その瞬間
誰かが
私の左腕をつかんだ
『嫌がってるじゃないですか』
その人は、走ってきたのか
息が上がっていた
ゆうまは、戸惑いながらも
『ほっとけ!俺の彼女なんだ!』
と声をあらげた。
『本当なの?』
と、優しく聞かれた問いに
『違います!助けて下さい!』
と、私は必死で訴えた
『違うって、言ってますよ?
皆、見てます。
離してあげた方が
いいんじゃないですか?』
ランチタイムで
駐車場は混んでいて
チラチラと何人かが
私達の方をみていた…
ゆうまも、それに気付き
はっと我にかえったように
私の腕を手放した
その後ゆうまは、
車のハンドルに頭をつけ下を向き
何も言わなくなってしまった……
私を助けてくれたその人は
そっと私の手をとり
車から降りるように
手を引いてくれた。
ずいぶん、泥だらけな手だった。
よく見ると
作業服のようなものを着ている。
その作業着も、かなり汚れていた。