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雨の人

第9章 飲み会とアイツ

川村さんだ!

藤田さんに
小さくすみませんと声をかけ
二、三歩建物から離れながら
私は急いで電話に出た。


「もしもし、川村さん!」



「あ、ゆき、ゴメンな。
お風呂入ってた。

もう…終わったの?」




「ううん、まだ。

まだ終わってないの…」




チラっと藤田さんを見ると
電話の相手が彼だと察したのか

ちょっと複雑な表情をしたまま
店の中を指差し
店の中へと入っていった



「ゆき、どうした?
気分でも悪いの?

なんか…あった?」



川村さんは
前から藤田さんのこと
ちょっと気にしてる。

心配をかけたくなかった私は
少し困っている藤田さんのことは
伏せることにした。



「ううん、あきひろくんの声
聞きたくなっただけ。
ごめんね?」



「ホント?ゆき?」



「うん、ホント。
何もないよ。

早く終わらないかな…。
ゆき、川村さんに早く会いたいな。」



「なんでも無いならいいけど…。
俺も会いたいよ、ゆき。

もう車でそっちに向かうよ。
宴会が終わったらすぐに会えるように。」



「うん!
終わったらね、
すぐに電話するから!」



それから電話を切り
席に戻った。


藤田さんは
最初よりは少し
遠慮ぎみに私に接してくれたけど
あれこれと質問され続け
お酒もすすめられてしまった。


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