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初の恋、終の愛

第1章 デリカシーのないイケメン

 目が覚めると自分がどこにいるのかさっぱりわからない状態だった。どうやら仰向けに寝ているということだけは理解できても、驚いた顔でこちらを見つめる4人の男性が誰なのかは分からない。
(ああ、これは夢だ。もう一度眠ればきっと……)
 そう思って目を閉じる。ここ最近、忙しくて睡眠を取れていなかったから変な夢を見ちゃったんだと自分を納得させた。
「おや。今、この子は目を開けなかったか? 私の見間違いかな」
「いえ。確かに目を開けました」
「ええ。しっかりとこの目で見ましたよ」
「おいらもちゃんと見たぞ」
(あれ? 知らない声が聞こえる。まだ夢から覚めないのかな)
 知らないふりをして寝ようと目をつむったまま羊を数え始めたとき、誰かの手が頬に触れた。
「なんと柔らかい。まるでややこのようだよ。ほれ、三吉も触ってみないかい」
 ほっぺを指でつつかれている……。
 私だって一応は女の子だ。寝ている女の子の顔を好き勝手触るなんて犯罪になりかねないっていうのに、なに人にも勧めてるんだ!
 三吉くん。つっこめ。つっこむんだ。
 女の子の顔を勝手に触るもんじゃありませんと言ってくれ。
 ……。
「あ。本当だ。大福みたいだな」
 頭の中で何かがぷちりと切れた。
「ちょっとおおお!」
 そう叫ぶなり目を開けて頬にまとわりついていた指を払いのけた。
「あれ」
「うおっ」
「わあ」
「そりゃそうなりますよ。若だんな」
 4人それぞれ違うリアクションをとりながら私から一歩退く。
「なに勝手に顔に触ってんのよ! あなたたちにはデリカシーがないわけ?」
 立ち上がって4人の顔を順々に見る。
(うわ。結構なイケメン)
 こんなに怒鳴り散らかすんじゃなかったと後悔しつつも、もう後には引けまいと睨みを利かす。
「でりかしい?」
 とぼけた声を出したのはたぶんさっき一番に私の頬を触った人で、歳は私と同じくらいに見える。透けるような白い肌と整った顔立ちに育ちのよさそうな雰囲気がよく合っている。そしてなぜか高そうな着物を着ている。

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