
初の恋、終の愛
第1章 デリカシーのないイケメン
「なんだろう。そのでりかしいってのは。春助知ってるかい?」
春助と呼ばれた大きな男は首を横に振った。一瞬強面に見えるけれど、よく見ればなかなかの男前。日本男児という言葉が似合うような意志の強そうな顔をしている。この人は筋肉質の胸板が着物の胸元から少し見えている……ってまた着物!?
「いえ。知りません。知っているか、辰五郎」
辰五郎らしき人物が首を傾げる。物凄い美形だ。俳優さんとして十分に食べていけるくらいの顔立ちだ。悩ましげにしかめられている顔が艶っぽい。
「私もわからないね」
「おいらもそんな言葉聞いたことねえな」
他の3人とは対照的なしゃべり方。なんといえば失礼に当たらないだろう。非、丁寧で非、上品なしゃべり方をする人だ。この人がきっとつられるように頬を触った三吉だ。程よく日に焼けた肌と白い歯が悪戯っ子のような印象を与える。
「で、そのでりかしいってのは何なんですか?」
辰五郎が私に聞いてくる。
「あの。ふざけないでもらえます? いまどきデリカシーの意味が分からない人なんていな……。ああ、おじいちゃんおばあちゃんなら知らなくても不思議じゃないけど、あなたたちどう見たって若者でしょ」
辰五郎が眉根を寄せた。
「どこのお国の言葉だい」
「どこって……アメリカでしょ。アメリカっていうか、イギリス? 英語ってイギリスから入ってきたものだし」
今度は4人とも眉根を寄せた。
「どこからおいでなさったんです?」
若だんなが丁寧に聞く。
「日本に決まってるじゃない。私、日本語喋ってるでしょ」
「確かにねえ」
若だんなは両の袖下に手を突っ込んで考えこんでしまった。
「それにしては南蛮らしきものの言葉を喋る。まさか南蛮からの回し者ではあるまいな」
どすのきいた声を発しながら私を睨む春助。
南蛮って……。
「それならこんな妙な格好してるのにも納得だな」
妙な格好!?
私は自分の体を見下ろす。昨日、おばあちゃんが勝手くれたばかりの真っ白のワンピースを変と言われたのだろうか。
「妙ってなによ! お気に入りなんだから。あなたたちこそ、変な格好してるじゃない。今時着物で過ごす若い男の子たちなんて見ないわよ。てゆうか、見たことないし」
春助と呼ばれた大きな男は首を横に振った。一瞬強面に見えるけれど、よく見ればなかなかの男前。日本男児という言葉が似合うような意志の強そうな顔をしている。この人は筋肉質の胸板が着物の胸元から少し見えている……ってまた着物!?
「いえ。知りません。知っているか、辰五郎」
辰五郎らしき人物が首を傾げる。物凄い美形だ。俳優さんとして十分に食べていけるくらいの顔立ちだ。悩ましげにしかめられている顔が艶っぽい。
「私もわからないね」
「おいらもそんな言葉聞いたことねえな」
他の3人とは対照的なしゃべり方。なんといえば失礼に当たらないだろう。非、丁寧で非、上品なしゃべり方をする人だ。この人がきっとつられるように頬を触った三吉だ。程よく日に焼けた肌と白い歯が悪戯っ子のような印象を与える。
「で、そのでりかしいってのは何なんですか?」
辰五郎が私に聞いてくる。
「あの。ふざけないでもらえます? いまどきデリカシーの意味が分からない人なんていな……。ああ、おじいちゃんおばあちゃんなら知らなくても不思議じゃないけど、あなたたちどう見たって若者でしょ」
辰五郎が眉根を寄せた。
「どこのお国の言葉だい」
「どこって……アメリカでしょ。アメリカっていうか、イギリス? 英語ってイギリスから入ってきたものだし」
今度は4人とも眉根を寄せた。
「どこからおいでなさったんです?」
若だんなが丁寧に聞く。
「日本に決まってるじゃない。私、日本語喋ってるでしょ」
「確かにねえ」
若だんなは両の袖下に手を突っ込んで考えこんでしまった。
「それにしては南蛮らしきものの言葉を喋る。まさか南蛮からの回し者ではあるまいな」
どすのきいた声を発しながら私を睨む春助。
南蛮って……。
「それならこんな妙な格好してるのにも納得だな」
妙な格好!?
私は自分の体を見下ろす。昨日、おばあちゃんが勝手くれたばかりの真っ白のワンピースを変と言われたのだろうか。
「妙ってなによ! お気に入りなんだから。あなたたちこそ、変な格好してるじゃない。今時着物で過ごす若い男の子たちなんて見ないわよ。てゆうか、見たことないし」
