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運命の誘惑

第21章 歪愛 *汐生side*

ハァハァと肩で息切らしながら寺島に鋭い視線を投げる奈菜を真っ直ぐ見据える。



「言いた事はそんだけ?」


「‥‥は?」



胸元掴まれたまま、怒るわけでもなく、当然優しいわけでもない。

ただ静かに低く冷たい声色で言葉を発する俺を怒りなのか、強がりながらも怯えてるのかユラユラと視線を揺らしながら俺の目を見る奈菜に





「ふざけんなっ!!!!」





怒鳴った。




「寺島の彼氏が死んだ事と寺島は関係ねぇーだろうが!!

誰が殺したかどうかを言うなら、事故起こした運転手が殺した!

普通恨むなら向こうだろうが!!!
お前、こいつがどれだけ苦しんでるのか知ってんのか?!
知らねーだろうが!!!」




あいつがどれだけ彼氏を思いながら毎日「声」を聴いてたか。

あいつが曇り空になると不安に押し潰されそうになってる事とか、

あいつが毎夜夢でうなされてる事とか、

あいつの部屋に大事そうに彼氏の写真を飾ってる事とか




「ずっとずっと苦しんでるの知らねー癖に‥

なのに寺島が全て悪い?

ふざけんなっ!

誰よりも何も知らねーお前が好き勝手言ってんじゃねーよっ!!」




奈菜の胸元を掴む腕を思いっきり奈菜を突き飛ばすようにして離すと奈菜は




「痛‥・・っ」




落ち葉や雑草が生い茂る地面へと座り込んだ。








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