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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 その日、珍しく嘉平太が酔って帰ってきた。この数日前も似たような事があった。数日前、同業の店主ばかりが集まる寄合があり、生憎と風邪で寝込んでいた惣右衛門の代理として嘉平太が出かけていったのだが、深夜に戻った嘉平太は酒臭さと安物の白粉の匂いを漂わせていた。
 寄合は夜四ツ(午後十時)には終わり、後は有志で祇園へと繰り出したという。そのことは後に惣右衛門が他の店の主人から聞き出したのだけれど、嘉平太が祇園に出かけたのは明白であった。

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